英語を母語としない私にとって,英語論文の執筆はとても高いハードルです。メールを書く場合には『例文集』から表現を借りて済ませられますが,論文を書く際に,同じテーマで執筆された文献の表現を書き写すことは「盗用」や「剽窃」とみなされてしまいます。
では,どうやって書けば良いのか? 本書は,英文ライティングを指導する教員をターゲットとしていますが,これから英語論文の執筆に挑戦しようとする学習者の手引きとしても有用です。
帯より
「引用と盗用研究」に基づく英文ライティングの指導書:インターネットからの「コピペ」問題など,昨今,日本の大学でも身近な問題となってきた「盗用」の問題。本書では,英語圏の研究社会における「引用」と「盗用」の考え方を紹介するとともに,日本人英語学習者にとって避ける事が難しい「表現の盗用」や「パッチワーク文」の指摘を受けないためにどのように英文指導を行ったらよいのかについて,具体的なカリキュラム案とともに示す。
吉村富美子『英文ライティングと引用の作法』
章立て
- 英語圏の大学における盗用という問題
- 英語圏における盗用研究
- 盗用とはどういう問題なのか
- 日本の大学で盗用と言われないための英文指導をどう行うか
付録
文献ノートの作成法 / APA, MLA, CMSに則った引用のルール / 盗用について知るために役に立つサイトのまとめ
僭越ながら,付録Dの「CMS(16th edition)に則った引用のルール」(p.140-156)を執筆させていただきました。”The Chicago Manual of Style“に準じた引用や要約,言い換えの方法,および参考文献表に書籍・論文・学会発表・ウェブ上の記事などを記載する方法など,基本的なルールを日本語でお読みいただけます。なお,CMSには,(1)注と目録を用いる方式と(2)括弧に著者名と出版年を記載する方式の2種類の引用ルールがありますが,それぞれ掲載しています。
執筆にあたっては,先に書かれた「APAの引用ルール」に該当する箇所をCMSから探しだして記載しました。1,000ページ以上のCMSを参照するのは予想以上に大変でしたが,(1)NACSIS-CATのコーディングマニュアルをひきながら書誌を作成する作業に似ていたこと(表紙も水色です!),(2)書誌の例が,シェイクスピアからジョン・ル・カレ,エリック・クラプトン,デニス・ロッドマンなど多様なこと,(3)引用方法だけではなく,学術文献を執筆するためのマニュアルであり勉強になったことなどから,とても楽しく作業できました。
吉村富美子先生と研究社のご担当様に,この場を借りて厚くお礼申し上げます。
吉村富美子. 英文ライティングと引用の作法:盗用と言われないための英文指導. 研究社. 2013, 165p. [ CiNii Books | カーリル | Amazon ]