2014年11月に開催される図書館総合展に,エディンバラ大学図書館のスチュワート・ルイスさんが登壇! 同大学は,1983年にデータライブラリーを開始し,1995年にはJiscからナショナルデータセンターに指定されてEDINAと改称,独自のデータリポジトリDataShareも公開しています。また,2012年8月から研究データ管理のロードマップを着々と進めており,来年5月にはサービスが完成する予定です。
日本でも,いよいよ来月からジャパンリンクセンター(JaLC)による「研究データへのDOI登録実験プロジェクト」が実施される予定です。また,2015年4月から適用される「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」(文部科学省)には,”一定期間の研究データの保存と開示”が盛り込まれています。
そこで11月6日のフォーラム「研究データへのアプローチ:エジンバラ大学図書館の実践事例を中心に」に向けて,海外の大学図書館と研究データ管理の動向をまとめてみました。
研究データ公開の背景
オープンサイエンスの拡がりや助成機関による義務化などによって急激に進んでいます。
- OECD: OECD Principles and Guidelines for Access to Research Data from Public Funding (2007)
- Microsoft Research: The Fourth Paradigm: Data-Intensive Scientific Discovery (2009)
- RCUK: Common Principles on Data Policy (2011)
- The Royal Society: Science as an Open Access Enterprise (2012)
- OSTP: Memorandum for the heads of executive departments and agencies (2013)
- G8 Science Ministers Statement (2013)
- EC: Guidelines on Data Management in Horizon 2020 (2013)
- OCLC: Starting the Conversation: University-wide Research Data Management Policy (2013)
- LIBER: LIBER Statement on Enabling Open Science [pdf] (2014)
- Funder Requirements (DMPTool): 米国の助成機関のデータ管理ポリシー
- Overview of funders’ data policies (DCC): 英国の助成機関のデータポリシー
- SHERPA/JULIET: 助成機関のOAポリシー
研究データ公開に関する国際機関
国や分野,機関を超えてデータ公開を支援しています。
- DCC (Digital Curation Centre) デジタルキュレーションセンター: Jiscの助成を受けてデータ公開を支援
- RDA (Research Data Alliance) 研究データ同盟: ”障壁なきデータ共有”をめざしてワーキンググループで活動+総会
- DataCite: 研究データへのDOI付与を推進するコンソーシアム
- ANDS (Australian National Data Service) オーストラリア国立データサービス: データ公開に関するツールや情報を提供
大学図書館の取り組み
ポリシー
大学が掲げる研究データ管理ポリシーの例です。
- Research Data Management Policy(エディンバラ大学)
- Research Data Management Policy [2016/02リンク切れ](シェフィールド大学)
- Research Data Policy(バース大学)
- Research Data Management Policy(モナシュ大学)
- JHU Policies(ジョンズ・ホプキンス大学)
- Research Data Policy [PDF](テネシー大学)
- University of Pittsburgh Guidelines on Research Data Management [PDF](ピッツバーグ大学)
- RDM Policy & RDM Guideline [English](フンボルト大学)
- UK Institutional data policies(DCC)英国機関のデータポリシー
- Policy tools and guidance(DCC)ポリシー作成ガイド
サービス事例
2011年のNSFの「データ管理計画(Data Management Plan; DMP)」義務化をきっかけに,相次いでサービスを開始しています(スライドp.10)。
- Building Support for Research Data Management 米国8大学のRDM支援
- Research Data Management Services: SPEC Kit 334 北米研究図書館協会(ARL)による調査結果
- 11 case studies 欧州研究図書館協会(LIBER)による11大学の事例紹介
- Roadmap for Research Data 欧州大学連合(LERU)21大学による研究データ推進のためのアドバイス
研究データ管理支援
教員や学生にガイダンスを行ったり,ウェブサイトで情報を提供したりしています。「なぜデータを公開するのか?」からはじまって,リポジトリ選択,メタデータの付与やライセンス処理など。
- Research Data Service[旧Research data management guidance (2016/12修正)](エディンバラ大学)
- Data Support Services for Researchers(オックスフォード大学)
- Research Data Management Service Group(コーネル大学)
- Managing Your Data(ミネソタ大学)
- Data Management(MIT)
- Data Management Services(スタンフォード大学)
- Data Management(ハーバード大学)
- Research Data Management(クイーンズランド大学)
- RDM guidance webpages(DCC)リンク集
「データ管理計画」作成支援ツール
日本でもデータ管理計画の提出が義務化された場合,こうしたツールの開発が求められるかもしれません。
- DMPTool(カリフォルニア大学)
- DMPonline(DCC)
- DMP Builder(アルバータ大学,カナダ)
大学のデータリポジトリ
東大のSSJDAのような分野リポジトリも多数あります。
- DataShare(エディンバラ大学)
- PURR(パデュー大学)
- Johns Hopkins Data Archive Dataverse Network(ジョンズ・ホプキンス大学)
- リポジトリ一覧: Databib, re3data.org, DataCite
- リポジトリのプラットフォーム: Repository Platforms(DCC)
図書館員のための情報
研究データ管理支援サービスを行うための知識や情報を得られます。また,先に挙げた各大学の利用者向けのサイトも参考になります。
- RDMRose: シェフィールド大学の自習ツール [CC BY]
- MANTRA | Do-It-Yourself Research Data Management Training Kit for Librarians: エディンバラ大学MANTRAの自習ツール [CC BY]
- Education Modules: DataONEの教育用スライド [CC0]
- Scholarly Communication Toolkit: ACRLによる学術コミュニケーションのツールキット
- andsdata – Youtube: ANDSによるガイダンスなどのアーカイブ
- How to Develop Research Data Management Services – a guide for HEIs: DCCによる研究データ管理サービス構築ガイド [CC BY]
- Publishing and sharing sensitive data (2014): ANDSによるセンシティブデータの取り扱いマニュアル [CC BY]
- Essentials 4 Data Support: Research Data Netherlandsのオンラインコース
研究データ公開の展望
データ出版・引用・評価
論文と同様にデータを出版し,引用して,さらにインパクトを測定する環境が整いつつあります。
- Force11: Joint Declaration of Data Citation Principles 研究データ引用の原則
- CODATA: Data Citation Standards and Practices データ引用の標準と実践
- DataCite: Why cite data? なぜデータを引用するのか?
- Impact Story: 4 things every librarian should do with altmetrics Altmetricsについて全ての図書館員がすべき4つのこと
- DCC: How to Cite Datasets and Link to Publications データ引用と論文へのリンク方法
データジャーナル
データを中心としたOAジャーナルも相次いで創刊されました。
- Scientific Data(Nature Publishing Group)
- ライセンス: CC BY または CC BY-NC, メタデータはCC0
- APC: USD 1,350
- Data in Brief(Elsevier)
- ライセンス: CC BY
- APC: USD 500 [-31 Dec. 2015, USD 250]
- A list of Data Journals (by Sarah Callaghan)
図書館総合展
2014年11月6日(木)第1会場にて,主催は機関リポジトリ推進委員会(国公私立大学図書館協力委員会, 国立情報学研究所),共催はデジタルリポジトリ連合(DRF)です。機関リポジトリの現在と近未来について,熱い議論が交わされます!
大学の知の発信システムの構築に向けて──機関リポジトリの新たな可能性を探るお申し込み:参加登録フォーム(機関リポジトリ推進委員会)
- 1. 大学の知の発信システムを構築する
- 講師:加藤信哉(筑波大学附属図書館),杉田茂樹(千葉大学附属図書館),森一郎(信州大学附属図書館),富田健市(北海道大学附属図書館),佐藤翔(同志社大学社会学部教育文化学科助教)ほか
- 2. 研究データへのアプローチ:エジンバラ大学図書館の実践事例を中心に
- 講師:Stuart Lewis(University of Edinburgh),池内有為(筑波大学大学院図書館情報メディア研究科),南山泰之(国立極地研究所情報図書室)
- 3. リポジトリを、もう一つ先へ:先行事例から学ぶ
- 講師:三角太郎(千葉大学附属図書館)ほか
Stuart Lewis氏
Deputy Director of Library & University Collections and Head of Research and Learning Services, University of Edinburgh [ ブログ | Twitter ]